アニメーター 林祐己さんインタビュー

アニメーター 林祐己さんインタビュー

東映アニメーションのエースアニメーターで知られて、そして現在はフリーとして活躍中の林祐己さん。当記事ではアニメ業界に入ったきっかけ、東映での長年の体験、最初に松本理恵さんとタッグを組んだ理由、今後の目標などについて、林さんに語っていただきました。


ーーお忙しい中、インタビューを受けてくださってまことにありがとうございます。

よろしくお願いします。

ーーまずは、林さんがアニメーターになりたいと思ったのはいつからなんでしょうか?

高校3年のときですね。けっこうギリギリに決めたような気がします。当時お絵かき掲示板サイトやお絵かきチャットが流行ってて部活がない日はよくそこで遊んでたんですが、その中に実際にイラストレーターをされてる方やアニメ業界に入ってる方もちらほらいて、交流を持つうちに自分も目指してみたくなった感じだったと思います。

最初はお話を作れないから漫画家は無理だし、色も塗りたくないのでイラストレーターも無理だな、と情けない理由の消去法だったんですが(苦笑)そのときすでに業界に入ってる方からフリクリと僕らのウォーゲームの2作品を薦められてめちゃくちゃ面白かったので自分のやりたいことがだんだん明確になっていきましたね。

ーー子供の頃の好きなテレビアニメやアニメ映画は何でしょうか?

ドラゴンボールとかセーラームーンとか夕食の時間にやってたようなのは家でついてました。あとディズニー映画とかもよくレンタルで親が借りてきてくれてたので観てたと思います。ピノキオとかダンボとかアラジンとか。割とオーソドックスなものばかりですね。

ーー林さんのプロデビューは2004年の『BECK』だったのですね。監督の小林治さん自身からスカウトされたんですか?たしかそういうので有名だったような…。

当時HPに置いてあったGIFアニメをみてオサムさんが誘ってくれたと記憶してます。といってもフリクリの模写とかしか置いてなかったので、実は今でもなんで誘ってくれたのか結構謎です。同時期にネットで知り合ってたりょーちもさんも誘われててお互い「あれー?なんでいるのー?」みたいな会話をした気がします。現場ではドシロウトだったので迷惑ばかりかけてしまったと思うのですがいち早くマッドハウスに入り浸れたのはいい経験でしたね。

林さんがアニメでの初参加の場面。『BECK』第1話より。

ーーアニメ業界に入る前に憧れのアニメーターは?

やっぱり松本憲生さんでしたね。前々から名前と有名な作品回とかは薦められて観てました。確か上京した年の春ごろにナルトの30話が放送してすげーと興奮した気がします。

BECKのときかなり参加されてていきなりお会いできたのは幸運でした。原画もたくさん拝見できてさらっと描かれてるのに超絶にうまい。なのに肩の力を抜いて自然体に観れるとゆうか。すごかったですね。

ーーどういった経緯で東映アニメーションに入社することになられたんですか?

ぼくらのウォーゲームをつくった細田監督がいたことと、あとはなによりこの業界では断トツに待遇面がよかったことですね。この業界を目指すと決めたとき、実はプチ家族会議になったんですがその時条件の一つだったこともあります。なかなか金銭面では大変な業界とゆうのも当時わかってたので。

ーーそして2005年に東映アニメーション研究所から卒業。研究所での経験を少し聞かせていただけますか?

半分高校卒から、残り半分は大卒か社会人経験してから入ってる人が多くて平均年齢は高めだったと思います。
アニメーター専攻80人、ディレクター専攻10数人、美術専攻5.6人?の割りと少数だなと思った記憶がありますが他と比べたことがないのでわかりません。

授業内容はクロッキーの時間が一番好きでしたね。当時御茶ノ水にあって学割もきかなかったので定期代が痛かった記憶が…。BECKでオサムさんに誘われて、2年目くらいからほとんど行かなくなってしまいました。

ーー東映アニメーションに入って最初の仕事は動画だったのでしょうか?それとも初めから原画を?

最初は動画でした。東映の場合大半の動画をTAP(TOEI ANIMATION PHILS.)に発注するので朝来ても仕事がないこともままあってそんな日は映画見に行ったりよく外を散歩してました。ノルマもなく動画検査さんもいなかった(!)ので当時からむちゃくちゃゆるいな~と思ってましたが、そのせいか結構動画は楽しかったですね。定時に来て定時に帰ってました。その後4か月くらいで原画になりましたが、果たして一般的な動画を経験したといえるのかどうか。。現在は動画検査さんも入ってちゃんと教育されてるそうです。

東映アニメーションで原画になってからレギュラーとして参加の『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』。

ーー『Yes!プリキュア5GoGo!』の制作で松本理恵さんが演出担当の回で参加されていますね。その時の松本さんの印象は?演出での注目ポイントはあるのでしょうか?

最初は同期のよしみで初コンテ演出のお祝い参加でした。学生時代の印象はあまりないんですが、その時は結構いいコンテを描くなーと感じてその後一緒にやることが増えていきましたね。確かその回だったと思うんですが、りんちゃんがおしりをはたく芝居とか三人で手をつないで奥に走っていくとかやりがいのある芝居プランが良かったですね。

ーー2011年にWebアニメ版『京騒戯画』の第一弾が配信されました。プロジェクトに関わることになられた経緯は?

劇場ハートキャッチプリキュアが終わった後に松本から「林もそろそろキャラデやるか~?」みたいなことを言われて、2010年12月末に会議室に呼ばれてバンプレストさんからオリジナルの企画をやりたいという話を聞かされたのが最初だったと思います。

たしか初音ミクとかBRSとかのような動画投稿サイトを使ったユーザー一体型のコンテンツを目指してた企画で、当初は作ったPV映像に後から一般ユーザーに音を付けてもらおうとゆうものだったんですよ。なので最初の5分PVは実は無音で作ってます。さすがにまったくの無音だと松本もコンテをやりようがなかったんでしょうね。まったく違う別の某曲を仮にはめこんで描いてました。その後完成した映像にはなぜか気づいたら音が足されてましたね。

おそらく企画が途中で二転三転して「音はつけよう!」となったんでしょうがびっくりですよね(笑)この辺の経緯は自分もよくわかりません。納品は2011年3月と割とタイトなスケジュールでしたが、同じ年の年末にさらにもう一本、今度はセリフありで30分を納品することになったので結構忙しかったですね。

ーー最初から最後まで林さんの手を感じる作品だと思うのですが、レイアウトと原画のカット数で何枚描かれたのか覚えているのでしょうか?

カット数的にはとにかくいっぱい描いたなぁと。

京騒戯画は2011年にPVを2本、2012年でPVを5本作ってて2013年のテレビまで実はトータル3年位やってたんですよね。初キャラデとゆうのもあって自分でやれることはなんでもやろうと決めて、コンテを清書したり。カッティング用のコンテ撮をつくったり…

当時の東映は作品が7ラインくらい動いてたので人がいなさ過ぎて、社内のいろんな作品班からイチ話数ごとに人を借りてくるなんてことをしてて大変でした。テレビシリーズになってからは最初に計5、600CUTくらい鍵となるシーンの縮小レイアウトを描いて全10話分の画面の統制を図ったりしてます。そうすると総作画監督時に手元に来た時に修正が少し楽なんですよね。

このあたりのエピソードは季刊エスさんがまとめてくれた京騒図画とゆうムック本にかなり収録されてると思うので興味ある方は見てみてください。(もちろん全部日本語なので海外の方が読むにはちょっと難しいかもしれませんが…。)

林さんが描いた『京騒戯画』のキャラクター初期設定。ビジュアルブック「京騒図画」(飛鳥新社)より。

ーーキャラクターデザインや作画監督で参加されている作品は原画にも大きく関わる印象ですが…。

やっぱり原画を描く方が楽しいですからね。

作画監督するにしても原画さんの上がり待ち時間があるのでその間に進めることが多いです。むしろ絵を直すのが自分しかいないので仕事の能率も上がって数も持ちやすいですね。

ーー『京騒戯画』のストーリーは、Webアニメ版からどんどん進化してテレビ版でやっと完全になる感じですが、プロジェクト中にキャラクターデザインに変更とかで絵にも変わることがあったのでしょうか?

声がついたのが2本目の30分PVからでそのなかで監督の中に変化があったのかコトと明恵のキャラクターが最初のイメージとかなり乖離してしまいました。それでもPVは尺も短いとゆうことで2012年のPVまで既存の設定で進めましたが、テレビシリーズになったことをきっかけにようやく設定を描きなおせたときはスッキリしました。

ーーテレビアニメ版からもう5年間以上経ちましたね。思い出深いところがあれば教えていただけますか?

もう5年たったのかというのとまだそんなものかという思いがどちらもあります。

とにかく濃密だったので終わってしばらくは燃え尽きてましたね。

ーー約12年間後で東映アニメーションの社員からフリーになられた理由は何でしょうか?

誤解を恐れずに言うと、この会社で自分がやれることは大体やり切ったような気がしたんです。長期にわたる放送作品が多い超大手企業ですから自分の5年先10年先の仕事を想像するとこのまま同じことの繰り返しになりそうだなと感じてしまいました。そのころ他社からのオファーもあって会社の方とも話し合って出向も一時的にしたりしてましたが、いろいろ契約面での制約も多く結果的には退社する流れになりました。

12年もいたのでまったく違った環境に身を置いて身軽になることでみえるものもあるかなと。とはいえ最近でも劇場ブロリーに参加したりしてるので今後も機会があれば東映作品に関わっていけるといいなと思います。

ーー東映の作業環境はどういったものなのかお聞かせください。

自分が所属していたのは旧社屋~光が丘までなので新社屋になってからの環境に詳しくないのを前置きしますと、かなりアニメーターにとっては自由な環境でした。

作品もある程度選べましたし、特にノルマもない。やる気さえあればいろんなことを挑戦してやっていける一方で、堕落しようと思えばどこまでも堕落できてしまう。

向かいの東映撮影所に社食もありましたし、まず生き残れる環境です。自分次第ですね。個人的にスタートをこの会社で切れてよかったなぁとつくづく思います。感謝です。

ーー現在は完全フリーになられて、ワークフローは前に比べると大きく変わったりしますか?

仕事でやること自体は大きく変わりません。付き合う会社の幅は広がったのかもしれませんがそんなに器用じゃないので基本一つのところで集中してやります。

ただ会社ごとの特色を感じれるのでそこは面白いですね。

ーーフリーになられても、東映で林さんに影響された若手アニメーターが沢山います。林さんは自分が彼らの師匠だと認識した事はありますか?そしてその若手アニメーターとのお仕事はいかがですが?

自分自身に特定の決まった師匠的な人がいなかったので(て言うとこれまでお世話になった方に失礼かもしれませんが仕事上の中で心の師匠はたくさんいます!)結構我流にやってきたのですが、そのなかでも集めた資料や学んだ技術を伝えていこうとはしてました。

逆にこっちが後輩から学ぶことも多かったので師匠なんて大それたものでもないです。社内の若手アニメーターの仕事は大変刺激になり、かつ助けられましたね。辞めるときに彼らとの仕事の付き合いが今後どうしても薄くなってしまうのが一番心残りでした。

林さんの後を継いだアニメーターたちがいっぱい集まった『HUGっと!プリキュア』の第4話第16話で林さんの東映アニメーションでの影響を強く感じられます。

ーーそして去年で松本さんとのお仕事で、ロッテ70周年記念のスペシャルアニメーション『ベイビーアイラブユーだぜ』にキャラクターデザインで参加されていますね。制作のご感想は?

松本の仕事としては血界戦線ED以来、1年ぶりでしたがまぁいつも通りとゆうか(笑

企業CMでかつBUMPさんのミュージッククリップみたいな形も成してるのでそういった意味では新鮮でした。

ただこれもこないだ松本と話したのですがEDだったりCMだったりショートムービーが続いてるのでそろそろストーリー性のある作品を今後は作っていきたいですね。

ーー今後にも松本さんとご一緒にお仕事をされる予定は…。(言えないのなら答えなくてもOK)

ぼんやりと(笑)気長に待ってください。

ーー林さんの絵は個性的でいくつかトレードマークのような点がありますね。それらの由来について伝えたいことはあるのでしょうか?

個性ありますか?そのときどきによって自分の中に絵柄の流行り廃りがあってそれを元に調整を加えるのですがけっきょく「いつもの」なところに着地してる気がするのが悩みですね。人のデザインだとそんなに悩みもなく描けるのですが自分がデザインするとなると途端に難しい。リアルとデフォルメの塩梅がいつもさぐさぐりです。

ーー最後に、アニメーターとしての一番の目標は何でしょうか?

今はオリジナルキャラデザインの作画監督で、劇場を一本つくりたいですね。

もっとアニメーションの根源に立ち返るとやっぱりハッとするような実存感やひらめきを感じるような画面をつくりたいなと思ってます。こちらのほうが難しいかもしれません。

ーー本日はお時間をいただき、どうもありがとうございました。

ありがとうございました!


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WhonderWy
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WhonderWy

I’m kind of new here, but are there any other articles in Japanese? There doesn’t seem to be any tags or categories which would make finding them easier.

Having said that, the translations are well done any way.